「君は何がやりたいの?」と聞く理不尽さ

最近同年代の友人たちが就職活動に熱心に励むのを見て、なんだかな、と思うことがいくつかある。そのなかのいくつかをブログで綴ろうと思う。今回はその一つ目である。

 

「やりたいこと?しらねえよ!」

私は自分自身の進路についていろいろ真剣に考えてきた方だと思っていて、普通の大学生が就職を意識しだす前からインターン会社説明会等に行っていたのだが、企業の人事の人や、周りの就活生に聞かれる、「君は何がやりたいの?」という質問を深く考えるにつれて、就職活動に早々嫌気がさしてしまった。

 

周りの学生を見ると、「~業界の中でも、~に特化した実績を持った御社に興味を持って志望しました!」とか「私は人と接することが好きなので、営業をやりたいです!」といかにもといった感じで話しているのである。

 

お前ホントにそんなこと思ってんのかよ、と内心呆れながら聞いていたのだが、いざ自分の番になり、「給料がそれなりにあって、福利厚生も充実してて、なんとなく、良さそうだから。」などと言えるはずもなく、調子に合わせた思ってもいないことを言わざるを得なかった。

 

自分が本当は何をやりたくて、どうやって生活をつないでいくべきか、についていわゆる”自己分析”を通して何度か考えてみたが、本当に腑に落ちる答えは見つからなかった。ましてや、どこの会社で何の仕事がしたいかなんてことは想像もつかない。

 

企業と学生とのギャップ

もちろん、本当にその会社に入ってしかできないことをやりたいと思って志望する人も中にはいるはずである。例えば「IBMに入社して人工知能ワトソンの研究に携わりたい」とか「清水建設のGREENFLOATを実現させたい」という話は夢があって興味をそそられる仕事ではあると思う。しかし、ほとんどの学生は、(少なくとも就職活動を行う時点では)何となく入社してとりあえず生活に困らないくらいの給料が欲しいなどと思っているのが本音だろう。

 

これは今の日本の教育のシステムを考えれば、当然のことなのかもしれない。なぜならば小学校に入学してから、高校や大学を卒業するまで、学校と家庭というかなり狭い価値観でしか生活できないからである。

小学校の男子児童に将来の夢を聞けば、サッカー選手や学校の先生、女子児童に聞けばお花屋さんや歌手というような答えが返ってくる。サッカー選手なら、家で日本代表がワールドカップで戦っているのをみてかっこいいと思ったり、学校のサッカークラブに誘われたりとサッカーに触れる機会があるからなりたいと思うのである。

その一方で、将来は会社で営業をしてみたいと考える児童はいない。なぜなら鉛筆1本も売る機会がないのに、商売をすることの面白みが分かるはずがないからである。(就職活動を前にして突然、営業をやりたいと言い出すことの不自然さである)

 

また、今の日本の社会では多くの人が、学校の勉強をして、偏差値の高い大学に入って、安定した会社に入社することが幸せだと認識している人が多いだろう。だから小さいころから本当はやりたくもない勉強をするために、学習塾に通って学校の成績を上げるために多くの時間を割く。

ほぼ勉強しかやったことがない狭い価値観のまま、大学の学部学科選択を迫られ、入学してからも勉強と、アルバイト、サークルくらいしかやらなかったような学生が、就職活動を目前にしてやりたいことを聞かれれば「そんなの知るか!」というのが正直な答えになってしまうのは、ある意味しょうがないことのような気がしなくもない。

 

要するに何を言いたいかというと、企業側が学生に「やりたいこと」を 聞いてくるにも関わらず多くの学生に「やりたいこと」がないという齟齬が生じてしまうのは、学生が狭い環境の中でしか生活したことがないからだということである。

 

自由度の高い就職活動を

残念ながら現在の就職活動のシステムを考えたら、多くの人が本当にやりたいことを見つけることはなかなか難しい環境にあることは事実である。

海外ではどうか。アメリカでは日本のような新卒一括採用ではなく、通年採用を行っており、これは学生のキャリア構築に合わせて柔軟に選べるにするためである。それに加え、卒業と同時に就職はせずにギャップイヤーという、大学では得られない経験をするための期間があり、学生がやりたいことを探すために十分な自由がある。

また、基本的にインターンシップを通じてからの採用になるためどこの会社が何の仕事をしているか、実務を通して把握できる機会がある。(日本のインターンシップは実務をやらせてくれる企業はほとんどなく、大半が会社説明会の延長であったり、グループワークという名のお遊びだったりする)

このようにアメリカと比較してみても、日本の就職活動が学生にとっていかに不自由なものかよくわかる。今年から学生が学業に専念できるようにという理由で、就職活動が3月解禁に変わったが、そんなことする暇があるなら就職活動自体をもっと”マシ”なものにしてくれというのが私の意見である。

 

 

 

そんなこと考えてる暇があるなら勉強しろ!という声が聞こえてきそうなので今日はこの辺で終わりにします。。。